人類の文明はエネルギーを消費し発展し続けてきたが、反面それは地球環境を汚染する歴史でもあった。45年後には世界人口が90億人に達すると予測されている今日、地球温暖化による危険信号が成果移住で点っている。北極の氷はこの40年間に40%縮小、今後50〜70年で北極は消滅し、推移は6m上昇する。この四半世紀の間に発生した鳥インフルエンザやSARSといった奇病、猛威を振るったハリケーン・カトリーナは、偶然起きたのではない。アメリカの元副大統領アル・ゴアが地球の瀕死の症例を紹介しながら、今、人類が取るべき方法を示す。
「不都合な真実」帯より
あなたはこの驚くべき現実に向き合いますか?目を背けますか?
不都合な真実
- 著作:アル・ゴア
- 翻訳:枝廣 淳子
- 価格: ¥ 2,940 (税込)
- 大型本: 325ページ
- 出版社: ランダムハウス講談社 (2007/1/6)
- ISBN-13: 978-4270001813
- ASIN: 427000181X
不都合な真実のご紹介
世界中を回って環境問題に関するスライド講演を行ってきた著者のアル・ゴア元副大統領の講演スライドを基に地球温暖化をメインテーマにわたしたち(特にアメリカ人)が直面している不都合な真実について、わかりやすくグラフや写真をたくさん用いたビジュアル化された情報を収録しています。
紹介されている論旨は
- 地球温暖化と二酸化炭素濃度の関係性について
- 地球温暖化による被害(主に気候被害)の紹介
- アメリカの政策批判
- できることとよくある誤解
これまでアメリカの環境教育は、危機感ばかり必要以上に煽り、絶望教育にすぎなかった暗黒の数年を経て、「行動する」に主眼をおいた手法が主流になってきています。本書でも「否定から絶望へと一足飛びに飛んでしまう、は危険な誤解だ(276ページ)」と簡単に触れています。本書もこの「行動する」に主眼をおき巻末のほうには個人がどう行動するべきか、現在世界中で取り組まれ成功しているオゾン層の対策などが成功体験として掲載されています。ですが、ビジュアルのインパクトが強く、さらっと見た場合の印象では「大変なことが起こっている」という印象が強いことは否めません。
内容的には既知のものが多かったです。が、さすがにいくつかの衝撃の事実があったので、列記して解説していこうと思います。
- 温暖化の原因を疑う論文が0ということ
- 新宿が発展途上国の都市だった!
- この本を読んで衝撃を受けたという知人が多いこと
温暖化の原因を疑う論文が0ということ
「地球温暖化は人間活動の影響であるか?」これに賛成する主張する論文は数多くあるのに、反対する論文数は0! と本書では取り上げています。どんな論文が反対論文とするのかが本書中でも曖昧ですが、有名な説には
- 二酸化炭素などの温室効果ガスよりも太陽の黒点活動の影響がほとんどだという説
- 石油、石炭の使用で増加した大気中の塵を核にして雲ができるので、温暖化よりも寒冷化の原因になっている説
- 産業革命以前から、実は地球は温暖化している説
などがあったような気がします。もっというと僕が小学校の時には、「地球寒冷化」というのが子供向け雑誌に掲載されていたこともありました。「温暖化なんぞ、地球に生命が誕生して、酸素が生み出され、大気組成を変えたのに比べればたいしたことではないし、過去には温暖な時期も氷河期もあったじゃないか!」というのも正論ですが、ちょっと時間のスケールが違いすぎます。このように、論文はないのかもしれませんが地球温暖化については現在も諸説があるため「自説がいかに正しいか」をまず説いていかなければなりません。実際、本書「不都合な真実」でも「人間活動によって地球が温暖化している」主旨を説明するために多くのページが割かれています。 科学的には、地球温暖化の原因が人間活動によって排出された二酸化炭素が原因なのかどうかは、きっちり追究して欲しいところですが、個人が温暖化に取り組む場合にはこの「地球温暖化は人間活動の影響であるか?」は、実はそれほど重要な論点ではないと思っています。
なぜなら温暖化の原因がなんであろうと、個人が具体的にできることは、結局のところ省エネ、省資源の2つです。仮に温暖化の事実が全く嘘で、実際は寒冷化していたとしても、省エネ、省資源は、人類が取り組んだほうがよい課題と言ってしまってもよいかと思います。 石油などに代表される化石燃料は、無尽蔵にある資源ではなく限りがあるモノだからです。 同じように著者のアル・ゴアが「省エネを無視したような豪邸に住んでいる。」「自家用ジェットで世界中を回っている。」「世界の二酸化炭素排出量の30%以上もアメリカが排出していてアメリカ人には指摘する権利などない」などの意見がありますが、関係ありません。二酸化炭素削減を訴える人は、二酸化炭素を排出してはいけないのなら、無呼吸のヒトしか発言できなくなってしまいます。すごく残念なことだけど、英語版のコンセプトが日本語版では省略されていても、大枠OKなのです。
そしてなによりも、著者がどんな人であっても、やはりそれらの理由は個人が省エネ、省資源に取り組まないべきの理由にはなりません。 だから、地球温暖化について、新聞記事や科学雑誌でなにを言われようが、個人や家庭としては堂々と省エネ、省資源に対して取り組むのがよいと思います。
余談ですが、子供らに地球温暖化について、よくある誤解があります。
地球温暖化で人類が絶滅する。もしくは、地球が消滅する
しません! たとえ、温度が100年後に平均気温が10度上昇したとしても人類は絶滅しないと思います。60億人が地球全体に拡散していますから、これを絶滅させることは、僕には想像できません。厳しい自然環境になっているかも知れませんが、一人残らずいなくなるほど人類はヤワではない!! また、人口が減るにつれて、人類による地球温暖化の影響は少なくなるはずです。現在の地球環境は相当変わるかもしれませんが、地球も数百万年(以上)消滅しません。
僕の住む街は発展途上国の貧困都市だった!
人口増加の大部分は、世界の貧困のほとんどが集中している発展途上国で生じている。
そして、その増加のほとんどが都市で起こっている。
「不都合な真実」219ページ
このキャプションは、本書「不都合な真実」である写真にそれられたキャプションです。どこかなーと思ってよく見てみるとその写真は、僕たちの暮らす東京都新宿(1996年)の写真です。新宿区では、少子化対策にとりくんでいます。まさか新宿が人口増加していて、さらには発展途上国だったとは!これは、新宿区民として、このキャプションに新宿の写真を選んだ理由をアル・ゴア氏に小一時間ほど説明してもらいたいものです。
不都合な真実を読んで衝撃を受けたという知人が多いこと
本書「不都合な真実」は写真やビジュアルを多用し、読者に与えるインパクトが最大限になるように作られています。知人らが衝撃を受けた、というのは、そのおかげかと思いきや、「実は地球温暖化についてこれまであまり詳しく知らなかった。」というのが大半のようです。思っていた以上にまだ、一般認知度が低いことに驚きました。本書「不都合な真実」を読んだり、映画「不都合な真実」を観たのをきっかけに、いろいろと活動する人が増えてくるのかもしれません。ただ、「二酸化炭素が原因なら、二酸化炭素を吸収する機械を作って吸着しちゃえばいい。」「二酸化炭素を凄句排出しているアメリカを経済封鎖しよう!」というのはちょっと違う気がします。後日ブログで公開しますが、地球温暖化は、人類にとって、重要課題で緊急課題だと思いますが、人類の課題は決して地球温暖化問題だけではありません。
アル・ゴア氏をはじめ、地球温暖化の防止を叫ぶ人は、他の問題より優先度が高いことばかりを主張しますが、(かなり高いことを認めますし、叫ぶ以上あれもこれも主張しては論旨がぼやけてしまうから仕方ないですね。)決して飢餓や貧困など他の諸問題をないがしろにして推し進めるものでもないと思います。人間中心で考えるか、生命全体を捉えたディープエコロジーで考えるかでも変わってくる問題ですが、優先順位は個人の価値観で決めて取り組めばいいと僕は思っています。
ただ、ここまでこの駄文を読んでしまったあなたには地球温暖化の現実に目を背けずに向き合う姿勢をオススメしておきます。
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